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慢性気管支炎というのは気道の炎症で、これにかかるとせきやたんがとれなくなります。気管の内面は・線毛と呼ばれる6ミクロンの毛のようなもので、一面覆われています。その内面を、少量の粘液がまた覆っていますので、気管に吸い込まれたゴミやばい菌は、ちょうどハエがハエとり紙にくっつくように、粘膜にくっついて取り除かれます。ハエとり紙は汚れてくると、取りかえねばなりませんが、気管の場合は、線毛が1分間に1OOO〜1500回くらいの割合で一定方向に動いて、ほうきのようにゴミがくっついた粘液を口の方に押し上げます。1分問に1〜4センチぐらいの早さで送られて、のどのところまで上がってきますと、のどの神経が刺激されて、異物感が生じるため、それを「たん」として吐き出すのです。
空気の汚れがひどいと、たんの量も増え、たんが汚なくなるのは誰もが経験しているところです。ところが、たばこの煙の中にあるフェノールやニコチンは線毛に作用してその運動を弱めてしまいます。そのため肺は感染を起こしやすくなります。
ヘビースモーカーの気管の粘膜を調べてみますと、線毛の数も少なく、短くなっているのがわかります。このような変化が起きますと、気管の分泌物が気管の中で停滞しがちになり、それが刺激になってせきが多くなります。1年のうち、せきやたんが少なくても3か月以上続き、しかもそんな状態が2年以上続いているものを、慢性気管支炎と呼んでいます。肺炎や慢性気管支炎は、死亡原因の第4位ですが、その多くが、たばこによって起きているのです。
慢性気管支炎が高じて、肺気腫という恐ろしい病気に進むことが少なくありません。気管は枝のように分かれてだんだん細くなり、先は顕微鏡でやっと見えるくら(15ミクロン)の肺胞と呼ばれる小さな袋になっています。
肺胞は肺胞膜といううすい膜でできていますが、肺の中には約7億5000万個の肺胞がびっしりと詰まっています。
私たちが吸い込んでいる空気には、約20%の酸素が含まれていますが、この肺胞膜を通して静脈血は、からだ中から運んできた炭酸ガスを肺胞の中に排出すると同時に、肺胞の中の空気から酸素をとりこみます。このガス交換がすむと、血液は赤黒い色から、鮮やかな赤い色になってからだ中の細胞に酸素を届けるために送られていきます。肺胞の中の空気は酸素が少なくなり、炭酸ガスが多くなりますが、入ってきた経路を逆に通って、鼻から外へ吐き出されます。このように私たちは生きているかぎり、眠っているときも、休みなく呼吸運動を続け、生命に不可欠な酸素をからだの組織に補給し続けているわけす。
ところが、このすばらしい器官に白家製の大気汚染ともいうべき、小さなゴミや有害な微粒子の満ちたたばこの煙を、毎日何十回、何百回と吹きつける人が多いのですから不思議です。このために、デリケートな肺胞の壁が破けてつながり、大きな袋になってしまいます。これが、肺気腫という病気です。肺はスポンジのように弾力性があり、ふくらんだり、縮んだりして、空気の出し入れをしているのですが、肺気腫になると古いゴムまりのように張りのない状態になってしまいます。肺胞はつぎつぎと連鎖的に破れていき、数センチもある大きな袋になってしまいます。
このように肺胞がつぶれていきますと、酸素と炭酸ガスの交換が十分にうまくできなくなり、いくら呼吸しても、からだに必要な酸素を供給できず、呼吸困難に陥っていきます。またこのことが心臓の負担を増すことにもなります。
肺内の空気を一度に吐き出すことができないので、マッチの火を一気に吹き消すことが難しくなります。肺気腫の患者かどうか、口もとからマッチ棒を15センチほど離して一気に吹き消すテストをやらせてみますとわかります。呼吸回数も多くなりがちで、一自、切れがし、外見上も胸部がふくらんできます。いったん破壊された肺胞は、どんな手段をつくしても二度と回復されることはありません。
このところ、年齢の低い人にも肺気腫が出はじめています。
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